海外には、業界ごと・地域ごとに数多くの展示会があります。「有名だから」「同業が出ているから」という理由だけで選ぶと、期待した相手に会えないことがあります。この記事では、出展の目的を決めるところから、展示会のタイプ、来場者の質、地域と時期、出展形態、費用対効果、候補の比べ方までを順に整理します。どの展示会に出るべきか迷っている担当者の方が、社内で説明できる判断軸をつくるための手引きです。
まず「何のために出るか」を決める
展示会選びは、目的を決めるところから始まります。目的によって、会うべき相手も、選ぶべき展示会も変わるからです。代表的な目的は次のとおりです。
- 新規顧客の開拓:買い手となる企業の担当者や決裁者と商談し、具体的な引き合いを得たい。
- 代理店・パートナー探し:現地で販売や導入を担ってくれる代理店、販売店、技術パートナーを見つけたい。
- 市場調査・テストマーケティング:製品が現地で受け入れられるか、価格や機能への反応を確かめたい。競合の動きも把握したい。
- ブランディング・採用:業界内での認知を高めたい。海外の人材や投資家との接点をつくりたい。
目的は一つに絞る必要はありません。ただし、優先順位はつけておきましょう。「第一目的は代理店探し、第二目的は市場の反応を見ること」のように決めておくと、後の比較がぶれにくくなります。
目的は「誰に会って、何を持ち帰るか」という言葉で書き出すと具体的になります。例えば「欧州の産業機器メーカーの調達担当と会い、次の打ち合わせの約束を持ち帰る」のように書きます。
展示会のタイプを見分ける
同じ「海外展示会」でも、性格は大きく異なります。主な見分け方は次の三つです。
総合型か、専門型か
総合型は、幅広い業界やテーマを扱う展示会です。注目度が高く、多様な来場者と出会えます。一方で、来場者の関心が分散しやすく、自社に合う相手を探す工夫が必要です。専門型は、特定の業界や技術に絞った展示会です。来場者の関心が近いため、具体的な商談につながりやすい傾向があります。
サイト掲載中の展示会でいえば、テクノロジー全般を幅広く扱う CES や GITEX GLOBAL、産業分野に軸足を置く Hannover Messe、ロボットや自動化に焦点を当てた automatica、工作機械分野の EMO などがあります。それぞれの性格は、詳細ページと主催者の公式情報で確認してください。
BtoB中心か、BtoCも入るか
BtoB(企業間取引)中心の展示会では、来場者の多くが仕事目的です。BtoC(一般消費者向け)の来場日がある展示会では、消費者の反応を直接見られる一方、商談相手を見つけるには工夫が要ります。会期中に一般公開日があるかどうかも確認しましょう。
業界関係者限定か
入場を業界関係者に限る展示会もあります。来場者登録の条件や、入場券の扱いを公式サイトで確認すると、どんな人が来るのかを想像しやすくなります。
また、スタートアップと投資家の出会いを重視する Slush や VivaTech のように、展示だけでなくピッチ(短時間の事業プレゼン)や交流プログラムが中心になる場もあります。展示会の「形式」も、目的との相性で選びます。
来場者の「数」より「質」を見る
展示会を比べるとき、総来場者数に目が行きがちです。しかし、来場者が多くても、自社の相手となる人が少なければ成果は出にくくなります。大切なのは、自社が会いたい人がどれだけ来るかです。
多くの主催者は、来場者の内訳を公式資料で公開しています。出展案内の資料や、前回開催の結果報告などを探してみましょう。見るべき主な項目は次のとおりです。
- 業種:自社の顧客になりうる業界の来場者がいるか。
- 役職・職種:決裁者や購買担当、技術担当など、話すべき立場の人が来ているか。
- 地域:開催国の国内来場者が中心か、周辺国や他地域からも集まるか。
- 来場目的:情報収集なのか、購買や提携の検討なのか。
来場者データの集計方法や定義は、展示会によって異なります。数字をそのまま横並びで比べるのではなく、「どんな人が来ているか」の傾向をつかむ材料として使いましょう。最新の情報は、必ず主催者の公式サイトで確認してください。
出展企業の一覧も参考になります。同じ分野の企業や、取引先になりうる企業が出展しているかを見ると、その展示会に集まる層が見えてきます。
地域・商習慣と開催時期を考える
地域と商習慣
展示会の開催地は、そのまま狙う市場と重なることが多くあります。欧州、北米、アジア、中東など、どの市場に入りたいかを先に決めておくと、候補を絞りやすくなります。たとえばアジアのIT・ハードウェア分野なら COMPUTEX、通信・モバイル分野なら MWC Barcelona といった具合に、分野と地域の両面から見ていきます。
あわせて、現地の商習慣も考えます。商談の進め方、意思決定のスピード、使われる言語、資料に求められる情報の細かさなどは地域によって違います。認証や規制への対応が必要な製品もあります。規制や輸出入の手続きについては、専門家や公式情報で確認してください。
開催時期と販売サイクル
開催時期は、自社の販売サイクルと合わせて考えます。業界によっては、年度の予算を決める時期や、新製品の採用を検討する時期がある程度決まっています。展示会で出会った相手が、次の発注や採用の検討に入るタイミングと合っているかを意識しましょう。
社内の準備期間も見落とせません。展示会の申込から開催までには、ブースの企画、展示品の準備、資料の翻訳、事前の集客などが必要です。どのくらい前から動くべきかの目安は、初めての海外出展スケジュールのガイドも参考にしてください。必要な期間は展示会によって異なります。
出展形態を検討する
出展の形には、大きく分けて次の二つがあります。
- 単独ブース:自社だけでブースを構えます。デザインや演出の自由度が高く、ブランドを伝えやすい形です。その分、企画や準備、運営の負担は大きくなります。
- 共同出展:複数の企業がまとまって出展する形です。国や地域ごとのまとまったエリア(ジャパンパビリオンなど)が設けられることもあります。
共同出展やジャパンパビリオンの募集があるかどうか、条件はどうかは、展示会や年によって変わります。JETRO(日本貿易振興機構)などの公的機関の情報を確認してください。公的な支援制度の探し方は、公的支援の探し方ガイドでまとめています。
初めての出展では、共同出展で現地の雰囲気をつかみ、手応えがあれば次回は単独ブースを検討する、という段階的な進め方もあります。目的と社内の体制に合わせて選びましょう。
費用対効果の考え方
海外出展の費用は、展示会の規模や地域、ブースの大きさによって大きく変わります。金額の比較をする前に、まずどんな費目がかかるかを洗い出しておくと、見落としを防げます。
主な費目
- 出展料(小間料金)、登録料などの主催者への支払い
- ブースの設計・施工、備品のレンタル
- 展示品・販促物の輸送と通関
- 出張者の渡航費・宿泊費・現地での移動費
- 資料・映像・Webページなどの制作と翻訳
- 事前の集客や広告、現地スタッフ・通訳の手配
- 会期後のフォローにかかる工数
具体的な料金は、各展示会の公式サイトや出展案内で確認してください。
成果指標をどう置くか
費用対効果を判断するには、出展前に成果指標(KPI:成果を測るための目印)を決めておくことが欠かせません。目的ごとに、次のような指標が考えられます。
| 目的 | 成果指標の例 |
|---|---|
| 新規顧客の開拓 | 獲得した名刺・リードの数、そのうち商談に進んだ数、見積依頼の数 |
| 代理店・パートナー探し | 候補企業との面談数、次の打ち合わせにつながった数 |
| 市場調査・テストマーケティング | ヒアリングできた件数、得られた意見の内容、競合情報の収集状況 |
| ブランディング・採用 | メディアや業界関係者との接点、出展後の問い合わせや応募の変化 |
展示会の成果は、会期中だけでは決まりません。商談がまとまるまでに時間がかかる業界も多いため、会期後のフォローまで含めて評価しましょう。フォローの進め方はリードフォローのガイドで紹介しています。
候補を比較表で並べる
候補の展示会が複数あるときは、比較表をつくると判断しやすくなります。社内で説明するときの資料にもなります。下は、項目名と記入のしかたの例です。数値は、各展示会の公式情報をもとに自社で記入してください。
| 項目 | 記入のしかた |
|---|---|
| 展示会名・開催地・会期 | 公式サイトの情報をそのまま記入する |
| タイプ | 総合型/専門型、BtoB中心/BtoCあり、業界関係者限定かどうか |
| 目的との合致度 | 第一目的・第二目的それぞれに合うかを「高・中・低」で評価し、理由を一言添える |
| 来場者の内訳 | 主催者資料から、自社に関係する業種・役職・地域の傾向をメモする |
| 出展企業の顔ぶれ | 競合や取引候補になりうる企業の出展状況をメモする |
| 対象市場・商習慣 | 狙う市場と一致しているか、言語や規制で気をつける点 |
| 時期の適合 | 自社の販売サイクルや社内の準備期間と合うか |
| 出展形態 | 単独ブース/共同出展の可否、公的機関の募集の有無(確認日も書く) |
| 費用の見込み | 費目ごとに見積や公式情報をもとに記入し、出典を残す |
| 社内体制 | 準備・運営・フォローに関われる人員と役割 |
| 総合評価・次のアクション | 出展する/視察する/見送るのどれか、その理由 |
- 出展の目的と優先順位を、言葉で書き出しましたか。
- 会いたい相手(業種・役職・地域)を具体的に決めましたか。
- 総来場者数だけでなく、来場者の内訳を主催者の公式資料で確認しましたか。
- 出展企業の一覧を見て、自社に合う層が集まるかを確かめましたか。
- 開催時期が、自社の販売サイクルと準備期間に合っているか確認しましたか。
- 単独ブースと共同出展の両方を検討し、公的機関の情報を確認しましたか。
- 費目を洗い出し、成果指標を出展前に決めましたか。
- 会期後のフォローの担当と進め方を決めましたか。
迷ったら、まず視察するという選択肢
比較表をつくっても決めきれないことがあります。その場合は、一度その展示会を視察してから、出展を判断するという方法もあります。
視察では、来場者の雰囲気、ブースの作り方、商談が行われている様子、競合の打ち出し方などを自分の目で確かめられます。出展企業に話を聞けば、その展示会でどんな出会いがあるのかも見えてきます。資料だけでは分からない「自社に合うかどうか」の感触をつかめるのが、視察の大きな利点です。
一方で、視察から出展までは次の開催を待つことになります。市場に入るタイミングを急ぐ場合は、その点も考えて判断しましょう。視察の準備の進め方は、展示会視察の準備ガイドで詳しく紹介しています。
展示会によっては、業界関係者以外の入場に条件があったり、事前登録が必要だったりします。入場条件や登録方法は、主催者の公式サイトで確認してください。
まとめ
海外展示会選びは、知名度や規模だけで決めるものではありません。次の順に考えると、自社に合う展示会を選びやすくなります。
- 出展の目的を決め、優先順位をつける。
- 総合型か専門型か、BtoBかBtoCかなど、展示会のタイプを見分ける。
- 総来場者数ではなく、来場者の業種・役職・地域の内訳を公式資料で確認する。
- 狙う市場と商習慣、開催時期と販売サイクルの相性を考える。
- 単独ブースか共同出展かを検討し、公的機関の情報を確認する。
- 費目を洗い出し、目的に合った成果指標を決める。
- 候補を比較表で並べ、迷ったら視察してから判断する。